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ファファラ精油物語 

鷺島広子 
第十四回


 

〇カモミール・ローマン(学名:Chamaemelum nobile 科名:キク科 抽出部位:花)
ファファラ アロマケアカテゴリ―;リラックス

 学名に nobile を含むものは「高貴な」「気品のある」という意味合いをもちます。カモミール・ローマンの別の学名には、Anthemis nobilis がありますが、「気品のある花」、「高貴な花」という意味になります。その名の通り、白く細い花びらが幾重にも重なり咲く様は気品に溢れ、優雅な気持ちにさせてくれます。

 カモミール・ローマンと呼ばれるものには、カモミール・ジャーマンに似た黄色い花芯を持つ一重の花びらを持つものをさす場合もありますが、ヨーロッパで精油が採られる場合は、多重の花びらに小さな花芯は控えめ、全体的に丸くぷっくりとした白い花が用いられています。

 15年以上前の夏至の頃、イタリアのピエモンテの農業体験に行った際、遠くまで見渡せる広い大地に一面に咲き誇るカモミール・ローマンの花畑を歩いた時のことは強く印象に残っていて、清楚で高貴ながら、何とも言えない地に足がつく安心感を感じました。同時期に訪れたローズやラベンダーの畑ももちろん感動しましたが、これらがどちらかというと精神の高揚感を感じたのに対し、カモミール・ローマンの畑は、どこかどっしりとした土の存在を感じました。大地の女神がその絨毯を優雅に素足で歩いている、そんな光景が今でも目に浮かびます。

 その香りもまた高貴で透明感がありながらも、どこか土の安心感を感じる気がします。イソブチルブチレート、イソアミルアンゲレートといったエステル類が含まれるため、フルーツの様な甘美な香りを持ちますが、同時にフレッシュな若々しい感じもあります。よくこの香りを“青りんごの様な“と表現されるのは、この甘さと若々しさを併せ持つからかと思います。同時に、針葉樹が多く持つα-ピネンを含むこともこの香りの特徴ともいえるでしょう。華やかさや甘さを持つ高貴な花の香りでありながら、土や森をも感じさせてくれるこの香りはやはり唯一無二の存在である気がします。

 ハーブティとして飲まれる場合は、カモミール・ローマンは日本ではカモミール・ジャーマンほど一般的ではないようです。この花が持つ、独特の苦みがその要因かもしれません。実はハーブティをブレンドする際にカモミール・ローマンを一輪入れるだけで、独特の柔らかさとまとまり、深みを醸し出してくれます(入れすぎると苦みが勝ってしまいますのでご注意ください)。

 同様に精油をブレンドで用いる場合もごく少量でよいでしょう。ラベンダー、ローズなど花の精油同志のブレンドは、文字通り華やかで優美な香りになります。春から夏にかけてはネロリと合わせるのもおすすめです。両者のブレンドが醸し出す独特の透明感と安心感は、木々の花が咲き、季節が陽に向かっていく中で、どこか上がりきれない心情を抱えているとき、何か動けない重たさを感じているとき、何かに固執してしまっているときなどに、安心感を持たせながら、ふわりと上昇気流に乗せてくれる気がします。

 前述のように針葉樹の香りも内包することから、高山マツやファーニードルといった、透明感のある針葉樹の香りと合わせてもよいでしょう。新しい季節や新しい環境で舞い上がる気持ちを適度に保ちながら、大地と繋がる安心感をもたらしてくれる気がします。

 またカモミール・ローマンは、ジャーマン同様にお肌に対しても、抗炎症作用を持ちます。スキンケアアイテムを作成する際にも、上記ブレンドは役立ちます。美肌を目的としたクリームなどには、カモミール・ローマン、ネロリ、ラベンダー。心身のケアを目的とする場合は、カモミール・ローマン、高山マツ、ベルガモットのブレンドなどはいかがでしょうか?より地に足をつけたいとき、肌トラブル向けのアイテムを作成したい際は、ベチバーやパチュリといったグラウンディングを促す香りと合わせるとよいでしょう。

 花の精油でありながら、大地や森を感じさせてくれる香りを持つカモミール・ローマン。中心から重なるように広がる白い花びらが形作るその花の形状は、どこか宇宙的でもあります。その花に気持ちよさそうに留まる小さな虫たちがなんとも幸せそうに感じた光景を、たくさんの花たちを支えるふんわりとした葉っぱの緑の絨毯と共に思い出します。

 木々や草の新芽が芽吹く季節、陽の季節への移り変わりを健やかに楽しみたいものですね。

 次回は、クラリセージをお届けします。どうぞお楽しみに!



 




カモミール・ローマン


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鷺島広子(さぎしまひろこ)

ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰
葉っぱのうらがわ 代表
アロマ&ハーブセラピスト。

12年間会社員として大手メーカーに勤務。システムエンジニアとして主にコミュニケーションロボットなど人の感覚に関わるシステム開発に携わる。自らの経験から植物療法の有用性を強く感じ、また人から人へ直接伝えていける環境を求め、2006年にプライベートサロンを開設。同時に様々な植物療法に関わるモノづくりを行うメーカーとの関わりが増え、2013年より植物と人との関わりをテーマにした場づくりをメインに行う“葉っぱのうらがわ“を立ち上げる。アースデイ東京やフジロックなどの野外イベントでも確かな材料で暮らしに役立つアイテムを作るワークショップを多数実施。「さとやまハーバルライフ」、「ボタニカルヒーリング」など、植物を直接感じ、暮らしに役立てるフィールドワークを行う。
サロンでは植物の恵みを心身の美と健康に役立てる季節のスキンケア、セルフケアアドバイス、インド式ヘッドマッサージセラピスト養成などの講座を実施、葉っぱのうらがわでは商品のコーディネートやイベント企画を行っている。東京都の国分寺市にある「暮らしを耕すマーケット」で、ファファラをはじめとするアロマやハーブのブランドを取り扱い、セルフケアアドバイスと共に販売中。2019年11月よりファファラのカテゴリー別講座を担当。


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