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ファファラ精油物語 

鷺島広子 

第二回「ネロリ」


画像出典:Wikimedia Commons

 


 

○ネロリ(学名:Citrus aurantium bigaradia 科名:ミカン科 抽出部位:花)
ファファラ アロマケアカテゴリ―;リラックス


香りを嗅いだ時に、ふと次元を超えるような感覚を覚えることがあります。かと思えば、香りによって、「今ここ」に連れ戻されることも。 

アロマテラピーを学び始めた頃、香りのスイッチング効果の大きさを感じたきっかけがネロリでした。職場から帰ってネロリの精油が入ったクレンジングでメイクを落とすと、瞬時に会社モードからプライベートモードへスイッチが切り替わることに驚きました。

以来、私の中ではネロリは、いつでも次元を超えることができる香り。その透明感と軽やかな上昇感は、まさに蝶のようにふわりと時空を超えるような感覚を抱きます。

グレープフルーツ、ベルガモットなどの柑橘系の香りは世代間ギャップもあまりなく好まれる傾向にありますが、精油としてはほとんどが果皮の香りです。その中でビターオレンジは、その小さな実(最近では枝葉)はプチグレン、そして花はネロリとして果皮以外の精油がある種となります。 

このビターオレンジと同種といわれる日本の橙(ダイダイ)も、その実のなり方や色形から縁起の良い植物とされていますが、世界中でも柑橘は太陽の象徴、生命力の象徴として扱われています。太陽の光を浴びてたわわに実をつける木の姿はまさに子孫繁栄や幸福の象徴として称えられることも納得します。

その果実をつける前の花の香りはまた、果実のそれとは異なる花特有の高揚感に透明感がプラスされたような香り。そして最大の特徴はその開放感にある気がします。

ゲーテ(18-19世紀の詩人・作家・自然科学者)の形態学論集の植物編によると、植物は、収縮と拡張を繰り返し成長・変容していくとあります。中でも、最大の収縮は種をつけること、そして最大の拡張は花をつけること、と述べています。

ネロリの香りを嗅いだ時の開放感、は実をつける(=最大の収縮)前の最大の拡張のエネルギーそのもの、そして他の花と比べて特筆すべきは、その中に光の要素を強く感じることです。この香りをクライアントさんに嗅いでもらう時、また化粧水としてネロリウォーターを使う時「ななめ45度上から香りを降らせてみて」とお伝えしています。ふりそそぐ祝福の光を感じるようにこのネロリの香りを嗅いだ時、あのふわっと次元を超える感覚がやってきます。

柑橘の花が咲き乱れる5月ごろに、昨年、一昨年とコロナ禍の中、人々は行動を制限せざるを得ない状況でした。季節は開放の夏へと向かっていて、気持ちもそうありたいのにそうできない特有の重苦しさが社会全体を包んでいたように思います。そんなときにネロリの香りを嗅いでいただいた方のお顔が、ぱぁっと明るくなる瞬間に沢山出会いました。どんな言葉よりも先に、一瞬で心の深いところに届きスイッチが上向きに切り替わる、閉じていたものをぱっと開かせる、香りって、そして花の力ってやっぱりすごいと感じた瞬間です。

ネロリの香りを構成する成分に目を向けてみると、ネロール、ネリルアセテートといったネロリ由来の香り成分、リナロールや酢酸リナリルといったラベンダーにも通じるリラクゼーションを促す成分、エステル類の多さなど、かなり“やさしい”性質を持つ成分が目を引きます。“やさしい”と成分は、抗炎症・鎮痛・鎮痙など、暴れている状態を優しく穏やかになだめる作用をもたらします。またネロールには皮膚の弾力を回復させる作用があると言われます。これらから、ネロリの香りが古くから女性に愛され、スキンケア用品にもよく使われることにも頷けます。

名前の由来となったネロラ公国の王妃アンナ・マリアのエピソードは有名ですが、貴族の間で香り手袋が流行した時代、この香りが激動の時代を優雅にたくましく生き抜く支えになったことは想像に難くないなと思います。
アラブのお菓子では、ローズウォーターとネロリウォーターを一緒に使った焼き菓子のレシピも多く、優雅な香りと甘さに酔いしれるティータイムになります。もちろん精油同士のブレンドの相性もよいです。

ファファラのネロリ精油は10%希釈ですが、その1滴の威力にいつも感動します。他の精油とも合わせやすく、実はネロリの中にも秘めているα-ピネンなどを含む木の香りと合わせると光注ぐ森の中にいるような落ち着きをもたらしてくれます。またラベンダーやローズマリーといったハーブ類と合わせると、草原の広がりをさらに縦方向に広げ空間全体を作ってくれるようなブレンドになります。もちろん柑橘類と合わせても、その輝きに文字通り花を添える感じの仕上がりに。

余談ですが、ヘリクリサム(イモーテル)の精油にもこのネロリと同等の成分を複数含むというのは注目すべき点かと思います。皮膚への作用は似た性質をもちますが、香りの方向性が全く異なります。それぞれの特異性を感じてみるのも面白いかと思います。

次回はジャスミンの予定です。花の香りが続きますがまた違った魅力をお楽しみに。





ネロリ10%


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鷺島広子(さぎしまひろこ)

ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰
葉っぱのうらがわ 代表
アロマ&ハーブセラピスト。

12年間会社員として大手メーカーに勤務。システムエンジニアとして主にコミュニケーションロボットなど人の感覚に関わるシステム開発に携わる。自らの経験から植物療法の有用性を強く感じ、また人から人へ直接伝えていける環境を求め、2006年にプライベートサロンを開設。同時に様々な植物療法に関わるモノづくりを行うメーカーとの関わりが増え、2013年より植物と人との関わりをテーマにした場づくりをメインに行う“葉っぱのうらがわ“を立ち上げる。アースデイ東京やフジロックなどの野外イベントでも確かな材料で暮らしに役立つアイテムを作るワークショップを多数実施。「さとやまハーバルライフ」、「ボタニカルヒーリング」など、植物を直接感じ、暮らしに役立てるフィールドワークを行う。
サロンでは植物の恵みを心身の美と健康に役立てる季節のスキンケア、セルフケアアドバイス、インド式ヘッドマッサージセラピスト養成などの講座を実施、葉っぱのうらがわでは商品のコーディネートやイベント企画を行っている。東京都の国分寺市にある「暮らしを耕すマーケット」で、ファファラをはじめとするアロマやハーブのブランドを取り扱い、セルフケアアドバイスと共に販売中。2019年11月よりファファラのカテゴリー別講座を担当。


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