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ファファラ精油物語 

鷺島広子 
第二十二回


 

〇ナルデ(学名:Nardostychys grandiflora / jatamansi 科名:オミナエシ科 抽出部位:根)
ファファラ アロマケアカテゴリ―;リラックス

 ナルデはヒマラヤ山脈の高地に小さな花を咲かせるオミナエシ科の植物、主にその根が古来から利用されています。ナルド、スパイク・ナード、甘松などは同じ植物をさしていると言われていますが、その希少性から異なる植物を代用している場合もあるようです。インド北部が原産とされ、古くからアーユルヴェーダでも使われているジャタマンシ(サンスクリット語で“かぐわしい”の意味)とも同一とみられています。

パチュリにも似た深いスモーキーさの中に、何とも言えない動物的な香りを併せ持つ香り。同じオミナエシ科のバレリアンとよく比較されますが、ナルドの方がすっきりとした甘さと深さがあります。
作用としては一言で言えば「鎮静」。精神の不安や不眠、イライラなどを鎮める働き、また胃腸の不調を落ち着かせる作用もあります。成分としても、セスキテルペン類のカラレンやα-パチョレンが含まれ、鎮痛や精神を安定させる作用が伺えます。

ただ、同じ鎮静作用を持つカモミールなどのキク科の持つ母の様に優しく包み込む感じとも異なり、また多くの樹木系が持つどっしりと落ち着かせてくれる様な作用とも何か異なる気がしています。

この香りを嗅いだ時、身体をある種の“風”が駆け抜け。暴れていたものが、すっと凪になるような力を感じます。例えていうなら、何かバラバラになっていた細い葉っぱ?繊毛?の様なものが、一瞬の“風”によって“整う”感じ。それがかなり深いところ、ボディ・マインド・スピリットのすべてにいきわたるような感覚を覚えます。以前このコラムでも取り上げた乳香(フランキンセンス)と似ているのですが、風の種類、風向きが違う…???

マニアックな表現になってきてしまいましたが、ナルドは、香りを嗅いだ時の自分の身体の内なる変化を感じる楽しさを、存分に味わう事ができるもののひとつかなと思いますのでご自身の心身の変化をぜひ味わって言葉にしてみるのもおすすめです。

イエス・キリストが十字架にかけられる前の日にベタニア村のマリア(マグダラのマリアともいわれています)が、「ナルドの香油」をイエスに注いだ(足に塗ったとの説も)との記述が新約聖書の中に出てきます。この香油は、蓋のない雪花石膏の壺に入っていて壊さないと使えないようになっていたとも伝えられ、このくだりからも非常に希少なものであったことが伺えます。古代ローマのプリニウスの著書「博物誌」にも登場し、古代エジプトやギリシャでも使用されていた記録もあるようです。
 
 香の世界でも古くから「甘松香」として知られ、沈香や白檀と合わせてその甘さと深さを増すブレンドとしても知られています。中国でも古くから鎮静・鎮痛・健胃薬としても用いられてきました。

 また先述のジャタマンシは、アーユルヴェーダの薬草の中でも有名なもののひとつとして、鎮静・鎮痛の他に不眠などの睡眠のトラブルに対して、またその抗菌作用などから、ヘッドマッサージやシャンプーや石鹸などにも広く利用されています。

これから寒くなる季節、神経系の疲れや睡眠に関するトラブルに有効なナルドは、同様の作用を持つ針葉樹や乳香などの樹脂の香りとの相性は抜群です。柑橘系との相性も良いことから、例えば、シダーウッド、マンダリン、ナルデのブレンドは安眠を促すためにも有効です。また気持ちがふさぎこんだときやPMS対策としてお勧めしたいのが、ナルド、ゼラニウム、ベルガモットのブレンド。ホホバオイルなどのベースオイルに混ぜて、腹部やデコルテのトリートメントにもおすすめです。

さらにヘアオイルとしては、ナルデ、フランキンセンス、ローズマリーのブレンドは、
健やかな頭皮や毛髪のためにももちろん、落ち着いて何かに静かに集中したいときにも
よいでしょう。

 クリスマスシーズン、年末年始、街並みは華やかですが、聖書にまつわる逸話や古来から利用されてきた特異性の高いナルドの香りをその歴史や背景に想いを馳せながら静かに楽しんでみるのもいいかもしれません。

 次回は年明け、ジュニパーベリーの予定です。どうぞお楽しみに。
 


 


ナルデBIO・CG


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鷺島広子(さぎしまひろこ)

ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰
葉っぱのうらがわ 代表
アロマ&ハーブセラピスト。

12年間会社員として大手メーカーに勤務。システムエンジニアとして主にコミュニケーションロボットなど人の感覚に関わるシステム開発に携わる。自らの経験から植物療法の有用性を強く感じ、また人から人へ直接伝えていける環境を求め、2006年にプライベートサロンを開設。同時に様々な植物療法に関わるモノづくりを行うメーカーとの関わりが増え、2013年より植物と人との関わりをテーマにした場づくりをメインに行う“葉っぱのうらがわ“を立ち上げる。アースデイ東京やフジロックなどの野外イベントでも確かな材料で暮らしに役立つアイテムを作るワークショップを多数実施。「さとやまハーバルライフ」、「ボタニカルヒーリング」など、植物を直接感じ、暮らしに役立てるフィールドワークを行う。
サロンでは植物の恵みを心身の美と健康に役立てる季節のスキンケア、セルフケアアドバイス、インド式ヘッドマッサージセラピスト養成などの講座を実施、葉っぱのうらがわでは商品のコーディネートやイベント企画を行っている。東京都の国分寺市にある「暮らしを耕すマーケット」で、ファファラをはじめとするアロマやハーブのブランドを取り扱い、セルフケアアドバイスと共に販売中。2019年11月よりファファラのカテゴリー別講座を担当。


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