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ファファラ精油物語 

鷺島広子 

第三回「ジャスミン」

 


 

○ジャスミン(学名:Jasminum sambac/J. grandiflorum 科名:モクセイ科 抽出部位:花)
ファファラ アロマケアカテゴリ―;つつまれて


一雨ごとに緑が深くなってくる初夏から盛夏にかけて、夜の風にのるようにふわりとやってくる香り、ジャスミンはまさに夏を感じる香り。世界中に数百といわれる種類がありますが、エッセンシャルオイルとして利用されているものは、種類が限られ、ほとんどが溶剤抽出によって採取されます。中でも香りとして最高級といわれる種が、ジャスミン・サンバックで、茉莉花(マツリカ)、アラビアンジャスミンなどともいわれます。フィリピンで、サンパギータという名で国花になっているのもこの種類です。たくさんのジャスミンの中でも、濃厚な甘さを感じさせながら、透明感のある軽さと高貴さを合わせ持つこの香りは古くから多くの人たちを魅了してきました。中国茶で飲まれる「ジャスミン茶」もこの種類が使われています。

ジャスミン(Jasmin)は、ペルシャ語で“神からの贈り物“を意味する「Yasmin」が語源と言われています。夜の闇に神秘的に輝くように咲くジャスミンの白い花、その独特のオリエンタルな甘く、濃厚な香りは、時にアラビアンナイトの世界に私たちを誘ってくれるような官能的な香りです。前回取り上げたネロリ(ビターオレンジの花)も同じ白い花ですが、その質感も香りも異なるのは興味深いところです。

ジャスミンは蔓性の植物で、力強く蔓が巻き付きながら成長し、5m以上にもなります。そして香り豊かな白い花は、夜の闇に浮かび上がるように開きます。蔓も花も、遠目から見る雰囲気はとてもやわらかで優しい印象ですが、その並々ならぬ精力のある力強さも感じる形態は、ジャスミンの作用をそのまま表しているようにも思います。

ジャスミンの香り成分がもたらす作用としては、催淫作用や鎮痛作用などが代表的に挙げられますが、これらの作用は、総じて、様々な「こわばり」をほぐし、解放することだと私は捉えています。

例えば、月経痛の緩和、という作用、

月経中独特の腰回りの筋肉のこわばり、ぎゅっとつかまれているような感覚、その「こわばり」をほぐすことで、原因となっていた筋肉が緩み、痛みが弱まっていきます。

例えば、抑うつ作用、

冷え切って固まってしまった心や情緒に対しては、温度感を持った香りが緩やかにほぐしていき、自分の心の中にあった一つの頑固な感情の塊が溶けるように開放されていくのが感じられるでしょう。パートナーと些細な事で喧嘩をして素直になれないとき、一つのことに固執してしまって心がぎゅっとなったとき、試してみてはいかがでしょうか?

 これらの例のように、感情、筋肉に対して、何かを閉じ込めてしまうように固くなってしまった「こわばり」をやさしくほぐし、手放し解き放っていくことを助けてくれる、そんな力がジャスミンの香りにはある気がします。

 一方でジャスミンには、熱くなり過ぎたものを「冷ます」作用もあります。炎症を鎮めたり、熱を持った皮膚のかゆみを抑えていく鎮静作用がこれにあたります。アーユルヴェーダでは、ジャスミンは「血液浄化作用・冷却作用」があり、様々なピッタ(熱や火の要素)が増大にした状態に対しての症状(例えば頭痛や熱中症、皮膚炎、感染症による発熱や腫瘍、感情面では怒りや情緒異常)に効果的と言われています。これはジャスミンの原産国がアジアからアフリカにかけた熱帯・亜熱帯気候の地域であることからも頷けます。

 その高貴さ、人々を魅了する官能的なジャスミンの香りは香水の原料としても古くから利用されてきています。その香り成分には、性的機能の強壮作用や強い抗菌作用も併せ持っています。また出産時の子宮の収縮を促したり、母乳を促進する作用、産後うつを予防する抗精神作用もあります。さらに、スキンケアとしても肌を柔らかくする作用があるので手作りコスメなどに利用するのもよいでしょう。

 Jasminum sambac と J. grandiflorum は作用的には同様ですが、原液精油か希釈精油*かによって、使い方も異なります。非常に濃厚な香りなので原液精油の場合は、針の先位の量を、通常の1滴として考えるのがよいでしょう。(ファファラのJ. sambac は、先が非常に細いスポイトが付いているので使いやすいです。) 一方希釈されたものは通常のドロッパーで1滴単位で使えますが、やはり量を最初は控えめにしてバランスを見て必要に応じて加えていくのがよいでしょう。
*ファファラではオーガニックでアルコールで稀釈した精油もご案内しています

一緒に合わせる香りは、サンダルウッドやシダーウッドと合わせるとオリエンタルな香りがより際立ちます。柑橘全般は相性よく、気分や目的に合わせてお好みで選ぶとよいでしょう。ゼラニウムやパルマローザ、イランイランなど、バランスを取るのが得意な香りとの相性も抜群です。いずれも少量にとどめるのがポイントです。

いつものお気に入りのブレンドがある方は、それにジャスミンをちょこっと加えてみると広がりと奥行きが出て香りがまとまり、香りの持続性が高まるのも実感できるかと思います。

私は“ここぞという時”のバスソルトにほんのちょっと入れるのがお気に入りです。“ここぞという時“のご想像はお任せしますが、心身共に疲労困憊、でも自分を上げていかなきゃ!という時のお助け精油としても実はオススメです。

ネロリ、ジャスミンと高貴な香りが続きましたが、次回は暮らしの中で様々なシーンで活躍するティートリーの予定です。どうぞお楽しみに。


 


ジャスミン・エジプト5%Abs.


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鷺島広子(さぎしまひろこ)

ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰
葉っぱのうらがわ 代表
アロマ&ハーブセラピスト。

12年間会社員として大手メーカーに勤務。システムエンジニアとして主にコミュニケーションロボットなど人の感覚に関わるシステム開発に携わる。自らの経験から植物療法の有用性を強く感じ、また人から人へ直接伝えていける環境を求め、2006年にプライベートサロンを開設。同時に様々な植物療法に関わるモノづくりを行うメーカーとの関わりが増え、2013年より植物と人との関わりをテーマにした場づくりをメインに行う“葉っぱのうらがわ“を立ち上げる。アースデイ東京やフジロックなどの野外イベントでも確かな材料で暮らしに役立つアイテムを作るワークショップを多数実施。「さとやまハーバルライフ」、「ボタニカルヒーリング」など、植物を直接感じ、暮らしに役立てるフィールドワークを行う。
サロンでは植物の恵みを心身の美と健康に役立てる季節のスキンケア、セルフケアアドバイス、インド式ヘッドマッサージセラピスト養成などの講座を実施、葉っぱのうらがわでは商品のコーディネートやイベント企画を行っている。東京都の国分寺市にある「暮らしを耕すマーケット」で、ファファラをはじめとするアロマやハーブのブランドを取り扱い、セルフケアアドバイスと共に販売中。2019年11月よりファファラのカテゴリー別講座を担当。


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